お伝えしたいことは「運命は改善できる」ということです。
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06/16
ケンと文太とニシと僕 ~学生時代の思い出~(1)
                                   澤谷 鑛

 手錠

「文太。煙草をくれないか?」
 バスにゆられて、気持ちよく、ウトウトとしていた文太は、隣のケンの声におぼろげに目を開けた。文太は僕の友人のあだ名だった。
 信号が遠くで青に変わったが、バスは停まっている。
 文太は、学生服の右ポケットからショートホープを出しながら、外を見るとどうも橋の中ほどでバスは停まっている。前も後ろも車はない。文太は僕に危機感をつのらせた顔をした。

バスは禁煙のはずなのに、長い髪のケンは車窓を開けて、美味そうに煙草をくゆらせた。

ケンと文太と僕は、バスの一番後ろにいた。ヒッピースタイルのケンと角刈りで学生服姿の文太は、誰がみても妙な取り合わせに見えただろう。鮨詰めの満員で立っている人も沢山いる。みんな学生なのだ。授業が終わり、大学から駅に向かうバスなのだ。

前の方からひとりひとり降りていく。否、降ろされているのだ。
「逃げられないな」
 ケンはつぶやくように言った。
「文太、タケ、先に行け」
 あとで思ったことだが、事情聴取などに巻き込まれない配慮だったのだろう。
ショートホープを箱ごとケンに渡した文太、その文太につづいて僕は乗降口に向かった。
 文太と僕のあとに五人ほどが降りた。最後にケンが降りてきた。

 三人の刑事に囲まれてケンの両手に手錠がかけられた。

 文太と僕は、じっとケンをみつめていた。
 ケンは手錠をかけられて、一度だけ笑った様な目で文太と僕をみた。しかし、あとは仮面のように感情をあらわにしない表情になった。

 ケンと文太と僕が大学二年生の晩秋の頃のことだった。
 このとき以来、ケンと僕は45年も会っていない。おそらくもう永遠に巡り会わないのだろう。否、ケンだけではないニシとも大学を卒業してから41年も会っていない。文太からは、毎年かかさず年賀状が来る。卒業後、何度か会ったこともある。

 嫌悪

 大学に入学し、夏休みが過ぎるまで、文太は動かなかった。

「文太。学内はちょっと異常だ。左は左で大手を振って歩き、右は右で得体が知れない。我々の存在を知らしめるべきだ」
 クロは毎日のように文太の部屋に来て話込んだ。

 クロとは高校生のときに一度だけ文太と会っている。ある合宿に参加したのだ。高校二年生の冬だった。クロは愛知から文太は広島からの参加だった。
 文太は、中学二年生のころから、その合宿に参加していたが、クロと出会った合宿は、それまでと違い色あせたものになった。その合宿のリーダー格の一人がこう言ったのだ。
「君たちは、すでに共産党からマークされている。もう逃げられない。共産革命が起これば、処刑の対象だ。この愛国運動を推進する以外にない」
「合宿の最初にこれを言われれば、即座に帰っていた」と文太は僕に言ったことがある。合宿の最後にこれを言ったのだ。
“こんなバカなことをいう集団は長くはない。消えるだろう”
 文太はそう思った。

 合宿で赤いセーターを着て煙草を燻らす黒木柾道を文太は嫌悪した。文太の心の枠に入らない人間は、彼には嫌悪以外のなにものでもなかった。赤いセーターでも、煙草でもない。クロそのものが強い不快感なのだ。(つづく)

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