お伝えしたいことは「運命は改善できる」ということです。
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06/17
ケンと文太とニシと僕 ~学生時代の思い出~(2)
                                       澤谷 鑛

 左翼の襲撃?

 ケンがニシを通して文太と僕に話がしたい、といってきたのは、月曜日のことだった。
 ケンは英文科で僕は国文科だった。殆ど接点はなかった。ケンは土曜日の事件を知っていた。ニシから伝わったのだろう。ニシは英文科なのだ。

 左翼が攻めて来るというので、それを迎え撃つために、大学の近くの空いている寮に、僕たちの寮のバスで数十人が向った。文太と僕は知らなかったが、左翼に近い考えを持っている田中が、「行かなくていいのか?」と知らせてくれた。文太は、部屋にあった木刀を持って、タクシーで大学に向った。僕は文太に少し遅れて、何も持たずに別のタクシーで向った。
 タクシーの運転手は、「何かあるの?」と僕に聞いた。
「左翼が大学で暴れるという情報で右っ方の人たちが集まっているということなのだが、嘘の情報だと思う。ただ、友人が、文太というあだ名なんだけど、木刀を持って向ったので、ちょっと心配でね」
「そうなんだ」
 運転手は、おそらくタクシー会社に僕との会話を一方的に無線で流した。それで文太が大学に到着したときには、若手の大学職員が待っていた。文太は若手の大学職員に、そのような左翼の動きがないことを聞かされた。

 僕は何もないと思っていた。夜の大学は静かだった。僕はそのままそのタクシーですぐに寮に引き返した。
 それから暫らくして、木刀を持たずに文太は寮に帰ってきた。後に、その木刀で大きな問題に発展することになる。

 異様

 僕と仲の良い英文科のニシを介してケンは近づいてきた。ニシと僕は大学の同じ寮にいたのだ。ニシと文太も一緒の寮で僕を介して仲がいい。
「タケ。ケンは左翼のバリバリの活動家なんだけどさ。国際派で他の大学で色々な活動をやっている。サリンジャーに興味を持っているという変わった奴なんだ。反米でアメリカの作家が好きだなんてさ……」
 吐き捨てるような言葉の中にニシがケンに親しみを持っているのが目でわかった。
「ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー……」
 ケンのつぶやくような声に私は明るい声で言った。
「『ライ麦畑でつかまえて』や『フラニーとズーイ』……そうだな、『フラニーとズーイ』は単独の作品だけど『九つの物語』に入っていたよな。俺は、それくらいしかサリンジャーは読んでいないけどね」
 僕の言葉にケンは、
「孤立の中から現状を打破する力をサリンジャーは示唆しているんだよな」
 と言った。
「俺には、『太陽の季節』のアメリカ版くらいにしかみえないけどね」
「無謀な発言だな、タケ」
 僕に向かってニシは笑いながら言った。しかし、僕の発言は無謀なものでもなんでもなかった。何かの書籍でそのように書かれていたのを言ったまでのことだ。
 文太だけが話にまったく興味がないような顔をして、煙草をくゆらせながら珈琲を飲んでいた。が、普段は僕と文学の話に明け暮れていた。

 学食の二階にある明るい光が入る喫茶店で四人は話していた。
 ガラス越しに外を歩く学生の目と近くの席の女子学生の視線が気になった。
 長い髪のヒッピースタイルのケンと、角刈りで学生服の文太と、ノンポリの代表といっていいアイビー・ルックのニシと、これといって特徴のない僕と、四人が喫茶店で珈琲を飲んでいるのだ。それだけで異様なのだろう。

 それから五ヶ月ほどして、ケンはバスを降ろされ、逮捕された。(つづく)

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